日々の萌やら燃えやら気の向くままに書き散らかします~
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流行り神3『高額アルバイト』後設定で霧崎&純也ほのぼの。
流行り神 SSの続き
connected
「ねえ、兄さん。もし、僕が死んだらどうする?」
日暮れ時、オレンジ色の光が僅かに漏れる部屋で、純也は義兄の霧崎水明に尋ねた。
それまで煙草をくゆらせながら資料を読み耽っていた霧崎は、僅かにその動作を止めるとちらりと義弟を見た。
「悲しいだろうな。状況にもよるが。」
意外にもあっさりとした答えに拍子抜けする。
「状況って?」
「死因だよ。もしも老衰や治療が難しい重病なら仕方が無いと諦めもつく。が、これが事故死、ましてや仕事絡みの殺人なんて事になったら…」
ここで一旦言葉を切る霧崎。純也は続きを促す様に義兄の顔を見ると、彼は僅かに口の端を持ち上げて言葉を続けた。
「俺の力の及ぶ限り原因を突き止めて犯人を捕まえてやる。そして、相応の罪を償ってもらう。」
静かに、だが力のこもった声で言った。
「…まあ、そんな事態にならない様に、俺も捜査協力には極力応じているつもりなんだがな。何かあったのか、純也?」
それまで仕事の顔つきでいた霧崎だったが、ふっと表情を和らげて義弟に話しかける。
弟もそんな義兄の変化を察したのか、馬鹿な質問をしたと漏らした。
「実は、この間捜査した事件がさ、小暮さんの妹さんが関わってて…」
そうして純也は先に遭遇した高額バイトの事件をかいつまんで話した。
あの事件で、ぎこちない距離感を持っていた小暮兄妹が和解する事ができたのだ。
それまでの過程を目の当たりにした純也は、図らずもその兄妹の絆に自分の義兄を重ねたのだろう。
閉塞感と緊迫感に包まれたあの空間で小暮兄妹を見た時、すぐに義兄の事が思い浮かんだ。
もしも自分が小暮の妹、綾の立場だったらこの兄はどう接してくれただろう?
もしもあの場から逃げる事が叶わず、帰らぬ人となってしまったら兄はどう思うのだろうか。
そんな事を考えている内に、やたらと兄が恋しくなってしまったのだ。
「それはまた、ヘヴィな事件に巻き込まれたな。」
「うん。もう、ホラー映画の登場人物になった気分だったよ。」
そう。
だから報告書やら何やらを早々に済ませて、こうして兄に会いに来たのだ。
ハタから聞いたらB級ホラー小説の様な話でも、現実に起こった事件である。
一歩間違えば命に関わる程の出来事だったのも霧崎は十二分に判っていた。
なのに、柔らかな笑顔でその話をする弟がやけにか細く見えてしまう。
もしかしたら、選択次第では今この場に存在していないのかもしれないのだ。
何て、不安定な存在なのだろう。
「…純也。」
「何?兄さん…!?」
つかつかと歩み寄ると、霧崎は両手を広げて弟を抱きしめた。
「!?」
突然の事に目を丸くする純也。まるで子供にでもする様に、霧崎は力を込めて抱きしめる。
その存在を確かめる様に。
「…もしも、お前が死んだら、俺はどうなってしまうのか、何をしてしまうのか、自分でもわからないよ。」
自分よりもやや下にある耳元で、低く静かに囁いた。
よれたシャツと吐息から煙草の匂いがする。自分を抱きしめる腕は力強くて頼もしい。そして、暖かい。
現実離れした世界に巻き込まれがちな自分を、しっかりと繋ぎ留めてくれるその温度が心地良く、
純也は目を閉じてその中に身を預けた。
「兄さん…変な事聞いて、ごめん。」
「気にするな。良く、無事に戻ってきたな。」
「うん…ただいま、兄さん。」
「おかえり、純也。」
そう言うと純也は、下ろしていた手をぎこちなく兄の背に回して抱き返した。

「ねえ、兄さん。もし、僕が死んだらどうする?」
日暮れ時、オレンジ色の光が僅かに漏れる部屋で、純也は義兄の霧崎水明に尋ねた。
それまで煙草をくゆらせながら資料を読み耽っていた霧崎は、僅かにその動作を止めるとちらりと義弟を見た。
「悲しいだろうな。状況にもよるが。」
意外にもあっさりとした答えに拍子抜けする。
「状況って?」
「死因だよ。もしも老衰や治療が難しい重病なら仕方が無いと諦めもつく。が、これが事故死、ましてや仕事絡みの殺人なんて事になったら…」
ここで一旦言葉を切る霧崎。純也は続きを促す様に義兄の顔を見ると、彼は僅かに口の端を持ち上げて言葉を続けた。
「俺の力の及ぶ限り原因を突き止めて犯人を捕まえてやる。そして、相応の罪を償ってもらう。」
静かに、だが力のこもった声で言った。
「…まあ、そんな事態にならない様に、俺も捜査協力には極力応じているつもりなんだがな。何かあったのか、純也?」
それまで仕事の顔つきでいた霧崎だったが、ふっと表情を和らげて義弟に話しかける。
弟もそんな義兄の変化を察したのか、馬鹿な質問をしたと漏らした。
「実は、この間捜査した事件がさ、小暮さんの妹さんが関わってて…」
そうして純也は先に遭遇した高額バイトの事件をかいつまんで話した。
あの事件で、ぎこちない距離感を持っていた小暮兄妹が和解する事ができたのだ。
それまでの過程を目の当たりにした純也は、図らずもその兄妹の絆に自分の義兄を重ねたのだろう。
閉塞感と緊迫感に包まれたあの空間で小暮兄妹を見た時、すぐに義兄の事が思い浮かんだ。
もしも自分が小暮の妹、綾の立場だったらこの兄はどう接してくれただろう?
もしもあの場から逃げる事が叶わず、帰らぬ人となってしまったら兄はどう思うのだろうか。
そんな事を考えている内に、やたらと兄が恋しくなってしまったのだ。
「それはまた、ヘヴィな事件に巻き込まれたな。」
「うん。もう、ホラー映画の登場人物になった気分だったよ。」
そう。
だから報告書やら何やらを早々に済ませて、こうして兄に会いに来たのだ。
ハタから聞いたらB級ホラー小説の様な話でも、現実に起こった事件である。
一歩間違えば命に関わる程の出来事だったのも霧崎は十二分に判っていた。
なのに、柔らかな笑顔でその話をする弟がやけにか細く見えてしまう。
もしかしたら、選択次第では今この場に存在していないのかもしれないのだ。
何て、不安定な存在なのだろう。
「…純也。」
「何?兄さん…!?」
つかつかと歩み寄ると、霧崎は両手を広げて弟を抱きしめた。
「!?」
突然の事に目を丸くする純也。まるで子供にでもする様に、霧崎は力を込めて抱きしめる。
その存在を確かめる様に。
「…もしも、お前が死んだら、俺はどうなってしまうのか、何をしてしまうのか、自分でもわからないよ。」
自分よりもやや下にある耳元で、低く静かに囁いた。
よれたシャツと吐息から煙草の匂いがする。自分を抱きしめる腕は力強くて頼もしい。そして、暖かい。
現実離れした世界に巻き込まれがちな自分を、しっかりと繋ぎ留めてくれるその温度が心地良く、
純也は目を閉じてその中に身を預けた。
「兄さん…変な事聞いて、ごめん。」
「気にするな。良く、無事に戻ってきたな。」
「うん…ただいま、兄さん。」
「おかえり、純也。」
そう言うと純也は、下ろしていた手をぎこちなく兄の背に回して抱き返した。
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